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電子書籍のバリアフリーへの動きについて

先日、EPUBアクセシビリティがJIS制定されたという報道がありました。

EPUBというのは電子書籍の規格で、
・固定型(=レイアウトが変わらない、コミックなど)
・リフロー型(=文字の大きさや行間などを変えられる、小説など)
の2種類があり、多くの電子書籍で採用されています。

いちえ会で携わっているマルチメディアデイジー教科書もEPUB3という規格で、基本リフロー型ですが、一般の電子書籍と大きく異なるのは、障害者向けに様々な機能が盛り込まれていることです。

たとえば、文字の大きさなどを変えられるのはもちろんですが、
そのほか
・文字色や背景色のバリエーションが豊富
・速度を変えられる音声読み上げ
・読み上げ箇所のハイライト表示(マーカーを引いたような表示)
・選択可能なルビ表示(原本通りや総ルビ表示)
といった具合です。

ただ、今現在、一般向けの電子書籍にここまでのアクセシビリティは設けられていませんので、現状では、障害者の人たちは、
「電子書籍を買ったけれど、自分に必要な機能がないので読めない」
といった問題が起きています。

こうした問題の解消に必要とされるのが、まさに今回JISとなった「EPUBアクセシビリティ」で、教科書で採用しているような機能の搭載や、電子書籍選択時に機能有無がわかることが期待されています。

実はこれに先立って、2019年には、読書バリアフリー法が成立しました。これにより、障害者向けの読書環境整備が求められるようになりました。

さらに、2021年6月、障害者差別解消法が改正公布、3年以内に(つまり2024年6月までに)施行されることとなりました。

この改正のポイントは、国や自治体は「義務」、事業者は「努力義務」だった合理的配慮(=バリアを取り除くよう障害者から意思があったときの重すぎない範囲での対応)を、事業者も「義務」とするところにあります。

つまり、法的枠組みでバリアフリーの実現が予定されているのです。

そうした状況から、現在、出版業界では Accessible Books Support Centerという組織が準備されつつあり、バリアフリーに向けた取り組みが促進されていくと思われます。

これから2年でいろいろ様変わりしていく出版業界、注目していきたいと思います。

【参考】
JEPA(日本電子出版協会)セミナー報告
2022年4月5日 落合早苗氏:アクセシブル・ブックス・サポートセンター(ABSC)設立に向けて ~出版業界の読書バリアフリー法対応
https://www.jepa.or.jp/sem/20220405/


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